大原則:本人は「不安の中」にいます
記憶が抜け落ち、今がいつでここがどこかわからなくなる——認知症の本人は、私たちが想像する以上の不安の中で毎日を過ごしています。困った言動の多くは、その不安から身を守ろうとする自然な反応です。
だからこそ、接し方の目標はただひとつ。「この人といると安心だ」と感じてもらうことです。
基本の型
1. 驚かせない — 正面から、目線を合わせて
- 後ろや横から急に話しかけると、それだけで驚きと混乱のもとになります
- 正面からゆっくり近づき、目線の高さを合わせてから話し始めましょう
2. 急がせない — 待つこともケア
- 質問への返事に時間がかかっても、10秒待つつもりで
- 「早くして」は禁句。急かされると混乱が強まり、かえって時間がかかります
3. 一度にひとつ — 短く、具体的に
- 「お風呂に入って、着替えて、ご飯にしましょう」→ 3つの指示は多すぎます
- 「お風呂に行きましょう」だけ。終わったら次をひとつ
4. 否定しない — 事実より気持ちに応える
- 事実の間違いを正すことより、その裏にある気持ちに応えます
- 「家に帰る」(もう家にいるのに)→ ✕「ここが家でしょ!」 → ○「そうですね、帰りましょうか。その前にお茶を一杯どうぞ」
- 事実の訂正は本人の混乱と自尊心の傷を深めるだけで、記憶には残りません。残るのは「嫌な気持ち」だけです
5. できることを奪わない
- 時間がかかっても、本人ができることは本人に。役割と自信を保つことがBPSDの予防になります
- 「手伝いすぎない勇気」も大切です
言い換えの引き出し
| つい言いがち | 言い換え |
|---|---|
| 「さっきも言ったでしょ」 | 「〇〇ですよ」(初めて聞かれたように答える) |
| 「違うでしょ」 | 「そうなんですね。ところで…」(受け止めてから話題を変える) |
| 「何もしないで」 | 「こっちをお願いしていい?」(安全な役割をお願いする) |
| 「ダメ!」 | 「こうしましょうか」(禁止ではなく提案で) |
完璧にできなくて当たり前です
家族だからこそ、イライラして声を荒げてしまう日もあります。それは介護の失敗ではありません。うまくいかない日が続くときは、困りごと別の対応ガイドや、ご家族自身のケアも参考にしてください。
このページは一般的な情報の提供を目的としたものです。対応に困る症状が続く場合は、かかりつけ医やケアマネジャーにご相談ください。