最初に知っておきたいこと

現在の認知症治療薬は、残念ながら病気を治す薬ではありません。できることは「進行のスピードを緩やかにする」「症状を和らげる」ことです。それでも、本人らしく過ごせる時間を延ばす意味は決して小さくありません。

新しい薬:抗アミロイド抗体薬

アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβを脳から取り除く、新しいタイプの薬です。

レカネマブ(商品名レケンビ)

  • 2023年に日本で承認。早期のアルツハイマー病(MCI〜軽度認知症)が対象です
  • 点滴で2週間に1回投与。臨床試験では18か月で症状の進行を約27%抑えました
  • 米国では2026年、自宅で週1回打てる皮下注射(ペン型) が治療初期から使えるようになりました。日本でも承認申請中で、通院負担の軽減が期待されています

ドナネマブ(商品名ケサンラ)

  • 2024年に日本で承認。同じく早期アルツハイマー病が対象で、4週間に1回の点滴です
  • アミロイドが十分除去できたら投与を終了できる可能性がある点が特徴です

知っておくべき制約

  • 対象は早期のみ: 中等度以降では使えません。「早く受診する」ことの意味がここにあります(受診の流れ
  • 事前検査が必要: アミロイドPET検査や脳脊髄液検査でアミロイドの蓄積を確認します
  • 副作用: 脳の浮腫や微小出血(ARIA)が起こることがあり、定期的なMRIでの監視が必要です
  • 実施できる医療機関が限られます: 認知症疾患医療センターなど、体制の整った施設での治療になります

従来からの薬

薬(一般名)タイプ特徴
ドネペジルコリンエステラーゼ阻害薬もっとも歴史が長い。軽度〜高度まで。レビー小体型にも適応
ガランタミン同上軽度〜中等度
リバスチグミン同上貼り薬。飲み込みが難しい方や飲み忘れが多い方に
メマンチンNMDA受容体拮抗薬中等度〜高度。興奮・易怒性を穏やかにする効果も期待。コリンエステラーゼ阻害薬と併用可

いずれも神経伝達を調整して症状を和らげる薬で、進行そのものを止めるわけではありません。

家族が気をつけたいこと

  • 飲み始め・増量時の変化をメモ: 吐き気・食欲低下(コリンエステラーゼ阻害薬)、ふらつき(メマンチン)などは医師に伝えると調整してもらえます
  • 「効いていないのでは」と自己判断で中断しない: 進行を遅らせる薬は「効果が見えにくい」のが普通です。やめる判断も必ず医師と
  • 服薬管理: 一包化(薬局で無料〜低額で対応)、服薬カレンダー、訪問薬剤師の利用が助けになります
  • BPSD(興奮・妄想など)に対する薬は「症状を抑える対症療法」です。まず体調と環境の見直しを試したうえで、最小限の使用が原則とされています

このページは一般的な情報の提供を目的としたもので、特定の治療を推奨するものではありません。薬の開始・変更・中止は必ず医師・薬剤師にご相談ください。承認状況は2026年7月時点の情報です。